社会人と芸人。

真夜中の深夜過ぎに、１階の台所で揚げ物調理をする女性がいる。
従妹の千陽氏だ。
古い油の匂いが、２階に充満する。
勿論、私の部屋も例外じゃない。
その所為もあり、最近、よく眠れていない。
布団に早めに入っても、ぐっすりと就寝出来る様になるのは大体２時過ぎ。

この家では、例えば、洗濯機を回す時間は6～21時と決められている。
でも今日、彼女は23時過ぎに大音量を伴う作業を始めた。
昼間の社会生活をしている人もいるのだけど…想像力が無いのかなぁ(笑)。
彼女は、私の様に昼間働き、生活している者が例外者であり、自分の生活時間が正しいと考えているみたい。
私は少人数の人間であり、この家から排除されるべき対象として、彼女の中にあるのかな？

それに、私みたいな短時間勤務者も、彼女は働いてない人物と捉えるらしい。
「働いている時間が短いから、きちんと働いてるうちに入らないよ」
そう言われた時は、非常に吃驚した。
不景気な世の中、正職員よりも優秀なパートさんやアルバイトさんもいて、それらで社会が支えられている事だってあるんだけど。
…私は優秀じゃないからかなぁ(笑)。

不覚にも高熱を伴う風邪を発症したので、万全の体制で早期治療に望み、休暇を頂いた時の事。
「良いよね～、社会人は風邪でいつでも休めて。私(芸人)なんて、例えば親が死んだって休めないよ」
…う～ん…“いつでも”って事は、ないんだけどなぁ(笑)。
休んでも大丈夫かそうじゃないかは、日々の勤務を把握して判断しているのだけど。
私は有難い事に比較的休みやすい環境だけど、世の中、休みたくても休めない人だって沢山いる。
そんな人達の事を思うと、“社会人”と“私”とを、十把一絡げにしないで欲しい。

そんな彼女だけど、社会人経験があるらしい。
「私が会社勤めしていた時、残業してるのに、会社からはおにぎりとかラーメンしか出なかった」
「12時過ぎて、親から会社に電話掛かってきて、やっと帰して貰えた」
炭水化物ばかりは辛いかもしれないけど、食べ物が貰えるだけ幸せで、気を使ってくれているんだと思うけど…どうなのかな？
私が残業三昧の頃、夕食や夜食を用意していったり、コンビニまで走ったり、皆で出前とったり。
だから、残業中に、上司から南部煎餅貰った時は、本当に嬉しかったなぁ♪
皆で持参したお菓子を分け合って、一緒に頑張った。
そうそう…家まで歩いて帰って、玄関で寝ていた事もあったっけ(笑)。
私は体調を崩してダウンしてしまったけど、世の中にはそうやって頑張っている人達がたくさんいるのだ。

以前、「○○社の社長さん達が支えて下さっている。有難いわぁ」って台所で呑みながら言っていたけど。
確かに、応援してくれるパトロンは必要。
でも、過ぎていく日々の中、穏やかに、或いはささやかに、泣いて笑って、努力や諦めや悲しみや喜び等、その人だけの心や時間の積み重ねを繰り返して生活している人達だって、彼女の芸を支えてるんじゃないのかな？
それを考えずに、社会人をどうこう言ってはいけないと思う。

草花や樹は土の上に生え、その土の中には沢山の生物がいる。
小さな雨粒が川になって、大きな海に流れていく。
…わかっているかな？ちょっと心配だ。